オードリー・ヘプバーン主演の『ローマの休日』は、知らない人いないくらいの名作です。
主役として初めて映画出演したヘプバーンはこの映画のおかげで、25才でアカデミー賞を受賞しました。
物語自体は単純です。ヘプバーンの演じる王女アンは宮廷の生活から逃れて、ローマで一日普通の人の生活を体験します。偶然アメリカからやってきた新聞記者ジョーに出会い、恋に落ちます。が、王女としての責任感から、涙の別れをして、元の生活に戻ります。
ヘプバーンの演じる王女アンはハリウッドの歴史に刻むキャラクターです。彼女の髪型や服装スタイルは当時のハリウッド女優にいおいては珍しく、のちのヘプバーンスタイルの出発点となります。私自身もヘプバーンの大ファンなので、彼女の写真関連で、こちらの本がおすすめです。
ストーリーやキャラクターの話はここまでにして、カメラとの関わりを話しましょう。新聞記者が出奔王女のスクープを狙って、仲間の報道カメラマンを呼び寄せました。カメラマンが持ち出したのはライター型のスパイカメラEcho8と大判プレスカメラです。
ライター型カメラEcho 8
1951年鈴木光学より発売されたこのカメラはライターとしても使います。カメラ自体は8mmフィルムを使用し、6x6mm判の小さいフォーマットで20枚撮影できます。
Zippoのように蓋を挙げると、上からウェストレベルファインダーが見れて、疑われることなくフレーミング、そして撮影することができます。シャッタースピードと絞りを調節できるレバーが備えていて、反対側に巻き上げダイヤルがあります。
残念なことに、このカメラの売れ行きがあまり良くなく、発売して間も無く生産中止になったそうです。『ローマの休日』が撮影された1953年には生産中止になっていました。
しかし、映画の上映によって、このカメラが人々の注意を引き付けて、鈴木光学に注文が殺到しました。そのニーズに応えるため開発されたのはEcho 8のお手軽バージョンで、名前はCamera-Liteです。絞りもシャッタースピードも固定で、ウェストレベルファインダーもついていません。その代わり、目のところまで持ち上げればフレーミングが可能です。スパイカメラとしては使えなくなりました。
大判プレスカメラ
この「もう1回」のシーンは非常に印象深いでしょう。ギターを振り回したヘプバーンの姿を捉えたのは大判プレスカメラです。
どのカメラなのかは確かではないですが、形からすると4×5のGraflex Speed Graphic(スピグラ)だと推測します。
1960年代まで、このようなプレスカメラが使われていました。フィルムの拡大作業が必要とせず、そのまま新聞に載せれることが大きなメリットです。その後、フィルム性能の向上に伴って、利便性や撮影枚数から35mmカメラに負けて、1970年代からは報道の第一陣からはほとどん退けていました。
GraflexのSpeed Graphicの最大の特徴はフォーカルプレーンシャッターを備えていることです。そのおかげで1/1000sの最高速度を実現したことで、「Speed」の名を冠したのです。大判レンズのレンズシャッターも使用可能で、フラッシュを使いたい時のシンクロの心配はありません。このような重複機能によって、シャッターが片方壊れたとしても、シャッターチャンスは逃さない報道カメラマンのニーズに合っています。
基本的にシートフィルムを使いますが、120や220フィルムホルダーの装着によって、ロールフィルムも使えます。
まとめ
『ローマの休日』のなかで登場したこの2種類のカメラは、フォーマットやサイズにおいては両極端です。8mmフィルムと4×5は100倍以上の差があります。しかし、大切な一瞬を記録する意味では同じだと思います。
スマホカメラ全盛の今、Echo 8のような盗撮的な使い方はホットトピックです。写真撮影はどこまで許されるのか、至る所に設置されている監視カメラは我々の生活とどう干渉しているのかなどシリアスな検討が必要でしょう。
最後、映画そのものに戻ります。ファンとして、様々な作品から世界に愛を広げたオードリー・ヘプバーンに
ありがとうございました!
参考リンク:
- monmoegyさんのブログ
- submin
- 『カメラの歴史散歩道』
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