前回の「写るための基本」では、レンズがピンホールの問題を解消するためのものだと話しました。
集光および結像はレンズのベーシック機能です。それをさらに理解するためにはよく見かけるレンズのタイトルから解説したほうがいいと思います。
焦点距離は画角を表す
焦点距離の変えるレンズをズームレンズ、変えないレンズを短焦点レンズと言います。
上の例にあるレンズはズームレンズです。焦点距離が24mm→70mm、3倍になったので、3倍ズームと言います。
この言い方はまるで画面が3倍拡大したように聞こえます。スマホ画面を二本の指で広げたような印象ですが、それは間違いです。焦点距離が3倍≠画面が3倍。
写真撮影において、焦点距離の本質は画角です。同じカメラにつけるレンズなら、焦点距離と画角は一対一です。画角の違いによって、得られるパースペクティブ(遠近感)が違います。下の図がそれを表しています。
画角が広いと、画面上同じ大きさにするにはレンズを被写体に近づける必要があります。遠近感による被写体の「歪み」が強くなります。それを利用して、上から自撮りすると、目を大きく、アゴを小さくすることができます。
画角がもたらすもう一つの違いはぶれです。広角であれあるほど、レンズが少しぶれても、カバーしている角度が大きいから、画面に写っているものは大きく変わりません。逆に望遠であればあるほど、少しのぶれでも全く違うものが写ってしまいます。これによって、安全なシャッタースピードも変わります。望遠レンズは手ぶれと対抗するため、より高いシャッタースピードが必要です。
ここまで画角の話ばかりしていますが、ではなぜレンズには焦点距離でタイトルつけていますか?理由は二つあります。
- 焦点距離はレンズの固有属性
- センサーサイズによって、画角は変わる(カメラ依存)
2つ目の理由をこうも捉えられます。同じ画角を得るために、違うセンサーサイズに違う焦点距離が必要です。それが「35mm換算焦点距離」というもう一つの「焦点距離」につながります。
ほとんどの人が焦点距離でレンズを語ることに慣れているので、画角を焦点距離で統一して表現したいです。そのために、フィルム時代に一番普及していた35mmカメラのフォーマットサイズを基準にしています。35mmカメラではこの画角はこの焦点距離のレンズだとした場合、あるレンズ+カメラのコンビのときの画角を「35mm換算焦点距離」で表しています。
「35mm換算焦点距離」でレンズを分類すると、このようになります。
- <24mm:超広角
- 24~40mm:広角
- 40~65mm:標準
- >65mm:望遠
絞りは「車線」
レンズは集光する役割があります。それを車道に例えたら、光が車で、車線が絞りです。
車線が減ったら、単位時間内に通過できる車両数も少なくなります。同じように絞りが小さくなると、集光効率も悪くなります。
4車線に制限をかけて、3車線にすることはレンズにおける「絞る」という操作です。
絞りの大きさはF値で表示されていて、レンズのタイトルにあるF2.8は最大絞りで、レンズの口径に関係しています。直感と反して、F値は小さくなるほど絞りが大きいです。明るさを2倍にしたいなら、F値を1.4倍小さくする必要があります。最大絞りの大きい(F値の小さい)レンズを明るいレンズとも呼びます。
絞りは被写界深度にも関係しています。被写界深度は下の図で解説します。
車線でたとえたら、1車線しかなく、渋滞が起きていることを想像してください。車道でより長い列ができて、被写界深度が深いことになります。つまり、絞りが小さいと被写界深度が深くなります。
絞りでレンズを明確にカテゴライズすることはありませんが、フルサイズカメラのズームレンズに「大三元」と「小三元」呼ばれるものがあります。「大」と「小」は最大絞りのことを指しています。具体的には
- 16-35mm F2.8
- 24-70mm F2.8
- 70-200mm F2.8
- 16-35mm F4.0
- 24-70mm F4.0
- 70-200mm F4.0
になります。
まとめ
レンズの基本である焦点距離と絞りはどんなものかを解説しました。カメラをやり始めると、いろんなジャンルにチャレンジしたくなって、違う焦点距離や絞りのレンズが欲しくなります。月を撮りたいなら超望遠だとか、彼女の写真をボカしたいなら大口径(明るい)単焦点だとか、お財布がたまりません。
一般的に、焦点距離が広角あるいは望遠になればなるほど、絞りが大きければ大きいほど、値段は高いです。その原因は「収差」を補正する難しさにあります。「収差」というのはレンズの欠陥みたいなもので、理想のレンズはそれをうまく打ち消しています。
「収差」の話はやや難しいが、ちゃんと理解すると、レンズのレビューに惑わされずに、自分にあったものが選べます。もっというと、あえて「収差」を利用したおもしろい写真も撮れるようになります。
では、楽しいカメラライフをお過ごしください!
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