無視できないレンズの基本スペック:最短撮影距離と最大撮影倍率

レンズのスペックを見て選ぶ時、焦点距離や最大絞りに目が行きがちですが、最短撮影と最大撮影倍率も無視してはいけません。

もちろんマクロレンズを選ぶとき、この二点が大事ですが、他のレンズにも同じくらい重要です。この二つのスペックはレンズのケイパビリティを大きく左右し、知らないとレンズを使いこなすことができません。逆に知っておくと、今の手元にあるレンズの限界がわかって、ストレスなく扱うことができます。

ピントが合わない?最短撮影距離をチェック

初心者の方が室内で望遠レンズを使う場合、ピントが合わないような状況があります。レンズが壊れているのではないかと疑う方もいらっしゃいますが、実はそうではなく、最短撮影距離の制限を超えしまったのが原因かもしれません。

最短撮影距離はカメラセンサーから被写体までの、レンズにピントが合わせられる最短の距離です。

被写体が最短撮影距離内に入ってしまったら、ピントが合わないのは当たり前です。もっというと、最短撮影距離付近の撮影は危険で、ピントあったり合わなかったりします。ギリギリに近寄ってシャッターを切るより、少し離れて、リタッチでクロップしたほうがいいと思います。ボケた写真は治らないですから。

最短撮影距離はレンズにマークしてあります。レンズによって場所が変わりますが、だいたい下の二箇所のどこかにあります。

左:レンズフロントリング 右:レンズボディの距離窓

最短撮影距離が長いと近寄れないことはわかりました。じゃ、近寄れるメリットはなんでしょう?大きく三つあります。

  1. 構図の自由度があがる
  2. 遠近感がより強調できる
  3. 被写界深度がより浅くできる

2と3をもう少し解説します。スマホを使って実験してみるとわかりやすいです。カメラアプリを開いて、机の角などに少しずつ近づいて見てください。遠近感が強調され、かつボケが強く(被写界深度が浅く)なることがわかります。下のGIFがそれを表しています。

被写体に近くと、遠近感が強調され、被写界深度が浅くなる

通常、広角レンズが望遠レンズより最短撮影距離が短いです。

最大撮影倍率

被写体がセンサーに写った大きさと実物の大きさの比率がここでいう撮影倍率です。

最大撮影倍率は同じ大きさの被写体がセンサーに一番大きく写ったときの撮影倍率で、レンズが被写体に一番近づいた時です。ズームレンズの場合、通常は焦点距離が一番長いときです。

最大撮影倍率=1(等倍)のとき、被写体がセンサー上同じ大きさで写る

最大撮影倍率が0.5(1:2)以上のレンズはマクロレンズと呼ばれます。極端な例は顕微鏡です。最大撮影倍率が100以上に上ります。普通のレンズにも「マクロ」の名前が入っている場合がありますが、最大撮影倍率が通常より大きいことを強調するためです。

マクロレンズの話が出たので、少しその話をします。本当のマクロレンズは近接撮影(接写ともいう)に特化したものです。通常のレンズは数メートル以上離れたとき画質が一番いいですが、マクロレンズは被写体に近い距離で撮影したとき、画質が一番いいです。

マクロレンズは至近距離のピント合わせのため、レンズの繰り出しが長いです。その分一定距離から離れた場合のオートフォーカスは遅くなります。それを解決するため、レンズにはどの撮影距離で使うかの設定があって、手動でレンズの繰り出しの範囲を絞るようなイメージです。下の例(タムロン90mm F2.8 Macro)では、全距離、中遠距離、近距離の3段階の設定ができます。

3段階の撮影距離設定

マクロ撮影はメインではないが、たまにお花とか料理とかを手元にあるレンズで撮りたい場合、接写レンズをつけるのが一つの選択肢です。値段はマクロレンズより断然安く、画質もそこまで落ちるわけではないので、気軽に試せます。つけたいレンズのフィルター径と同じサイズのものを選べばいいです。

フィルター径が67mmの接写レンズを選ぶ

ただ、接写レンズをつけると、中遠距離のピント合わせができなくなるので、つけたり外したりしないといけなくて、手間はかかります。

ケンコー接写レンズの作例、使用レンズはペンタックス FA 80-320mm

まとめ

レンズの基本スペックである最短撮影距離と最大撮影倍率を解説しました。

最短撮影距離を意識すると、どのシーンはどのようなレンズを持ち出すか、あるいはどのレンズを買うのかがわかるようになります。

最大撮影倍率についても同じです。例えば、旅行するとき高倍率のズームレンズ一本しか持ち出さないのであれば、マクロ撮影は期待できないので、接写レンズを一枚一緒に持ち出す、といった判断ができます。

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