フィルムとデジタル①:銀塩とセンサー

デジタルカメラ誕生したときから、フィルムとデジタルの争いは絶えることがありません。

しかし、本当に写真とカメラを愛する人は、それぞれの特徴を生かして、適材適所で使い分けることができるはずです。

このシリーズはフィルムとデジタルの特徴を技術的に解説します。それぞれの強みと弱みを理解した上で、満足のできる写真を仕上げるのが目的です。

感光剤としてのフィルムとカメラセンサー

写真は光の芸術です。

絵に例えると、光が油彩で、フィルムとカメラセンサーがキャンバスです。

フィルムにしろ、カメラセンサーにしろ、どれも光を感じ取る感光剤なのです。

光に敏感のときは一般的にISOが高いと、呼び方も一緒です。

その違いは音楽の記録でいうレコードとCDの違いみたいなものです。つまり、アナログとデジタルの違いです。

フィルムに照射された光がフィルムに含まれる銀塩粒子に化学反応を与えて、現像の過程をへて、その結果が定着されます。

同じように、カメラセンサーにあるフォトダイオードはADC(アナログデジタルコンバーター)の役割を果たして、光信号の強さを数値化することで、デジタル写真のRAWファイルとなります。

フィルムの感光は銀塩のパーティー

カラーネガフィルムを例に話します。

フィルムはサンドイッチのような構造になっています。その感光プロセスは光がフォークのようにサンドイッチを貫通していく過程でもあります。

フィルムのサンドイッチ構造

上の図はフィルムの断面を表していて、真ん中の部分が感光する部分です。主に銀塩(AgBr)粒子によって構成されています。若干誤解を招くのはその厚みです。実際の銀塩レイヤーは薄いです。

200μmにおよぶフィルムの断面で、銀塩レイヤーが2〜3μmしか占めていません。残った部分はフィルムの支えとなるベース部分です。下の図がそれを表しています。

色が塗られている部分が銀塩層、残りはベース

銀塩粒子は極めて小さいです。135フィルムの1コマに500億以上の銀塩粒子が存在しています。しかも、光を浴びせると黒くなる性質があります。

この一つ一つの粒子を人に例えるとしたら、その感光の過程はその一人一人が集まって、パーティーをやっているようなイメージです。

パーティーにうまいお酒がたくさんあったほうが人が集まりやすいと同じように、光の強いところでは、銀塩粒子が大きなカタマリを形成しやすいです。

逆に、光の弱い部分には銀塩粒子がなかなか集まらなくて、散らばっている状態になります。

このように、明るい部分は黒くなるため、ネガと呼ばれます。

銀塩粒子のミクロ構造

人間が色を認知できるのは視細胞に赤、緑、青の三原色に反応する錐体細胞が存在しているからです。

なので、カラー写真を作るにはこの三原色を表現する必要があります。最初の図にもあったように、カラーネガは三原色の補色のシアン、マゼンタ、黄色のレイヤーによって構成されています。

それぞれの層は対応する原色にしか反応しないため、カラーのネガができるわけです。

ネガなので、まだ反応しきれない銀塩粒子がある、つまり「まだ飲める人がいる」ことから、少し露出オーバーしてもダイナミックレンジからはみ出しにくいです。

逆に露出アンダーだと、銀塩粒子が十分反応していないため、ディテールが潰れて、ダイナミックレンジからはみ出てしまいます。

CMOSセンサーは光の蓄積

今は一般的になっているBSI(裏面照射型)を例に話します。

BSIセンサーの断面図(From Wiki)

上の図にあるフォトダイオードは光信号を電気信号に変換する半導体です。

一つ一つのフォトダイオードは水筒みたいに、入ってきた光を蓄積していきます。

なので、銀塩粒子と違って、光の強さに正比例して、明るく(白く)なります。

一定の量を超えると、水が溢れてしまうと同じように、露出オーバーになった場合はダイナミックレンジからはみ出しやすいです。

逆に露出アンダーだと、ディテールがまだ保留されていて、ダイナミックレンジからはみ出しにくいです。

色の再現もフィルムと違います。ほとんどのCMOSセンサーがいわゆるモザイク式(ベイヤー式とも呼ぶ)で、平面状にカラーフィルターを配置することによって分光します。

カラーフィルターを平面上におくベイヤー式

人間の目が緑に敏感(緑の錐体細胞が多い)ことから、赤、緑、青の比率が1:2:1となっていています。

一つの四角(一色)が1ピクセルとなっています。自分のフィルターの色しかないので、周りのピクセルから計算して、本当の色を再現しています。

言い換えると、デジタルカメラの色は合成によるものです。

CMOSセンサーのもう一つの特徴は、感光部のフォトダイオードが銀塩粒子と違って、表面を充満していないことです。

一個一個のフォトダイオードの周りに基板や配線などがあります。そのままだと、感光しない部分まで光が当たって、効率が悪いです。

そこでカラーフィルターの上にミクロレンズを配置させて、入射光がフォトダイオードに集約できるように屈折させます。しかも、入射角度が垂直に近いほど、集約効率がいいです。

入射角度が垂直から離れると、光の集約効率が悪くなる

当然このミクロレンズの屈折率は変わらないですから、まったく異なる設計のカメラレンズには対応できません。だから、各社のマウントシステムがあって、それぞれのセンサーに最適化しているレンズを提供しているのです。

この垂直入射によるもう一つの影響があります。それは広角レンズの設計です。

フィルム時代にはこの垂直入射の心配がなかったので、極端な角度の入射光でも色がズレたりしないし、レンズもコンパクトにできます(対称型)。

デジタル時代になって、一眼レフのミラーの干渉もあって、広角レンズは逆望遠(Wiki)の採用を余儀なくされました。

ミラーレス全盛の今でも、バックフォーカスは取れるものの、垂直入射問題によって、広角レンズは逆望遠のものが多いです。収差を補正するためのレンズが多く、全体的に重でかくなってしまいます。

Carl Zeissの35/2.0 左が逆望遠のDistagon 右が対称型のBiogon

また、フィルム時代の広角レンズをアダプター経由でミラーレスにつけたとき、撮影されたものの周辺に色のズレが発生する場合があります。

超広角12mmの時の色ズレは激しい

まとめ

フィルムとデジタルの感光剤、銀塩とセンサーの特性を話しました。

比較的に、ネガフィルムは露出オーバーに耐性が強く、カメラセンサーは露出アンダーに耐性が強いです。

また、入射光の角度について、フィルムは気にしないですが、カメラセンサーの場合は神経質になります。

次回はダイナミックレンジとラチチュードについてお話します。

では、楽しいカメラライフをお過ごしください!

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