自宅で湿板写真:カメラ、道具、薬品揃えから撮影まで

田村写真で湿板写真のワークショップを参加してから2ヶ月経ちました。その間、カメラの購入、フィルムホルダーの改造硝酸銀タンクの自作など一通りの道具揃えはできました。

諸々含めて、10万円くらいかかりました。カメラとレンズにもっと安い選択肢もありますので、湿板写真を自宅でスタートする最低金額は6万円くらいです。

いよいよ薬品を調合して、撮影に入ります。今回の記事はものの調達と薬品の調合にフォーカスして、自宅の撮影プロセスはまた今度お話しします。

試薬、道具

試薬は高橋藤吉商店から購入しました。初心者なので、量を少なめにしました。リストはこちらです。

  • 硝酸銀25g
  • コロジオン(5%)500ml
  • ジエチルエーテル 500ml
  • 95%アルコール(エタノール) 500ml X 2
  • 臭化カドミウム 25g
  • ヨウ化カリウム 25g
  • 硫酸第一鉄(II) 25g
  • 氷酢酸 500ml
  • チオ硫酸ナトリウム 500g
  • ラベンダーオイル 25g X 2
  • 炭酸カルシウム500g

ニスを調合するための「ガムサンダラック100g」は日本リノキシンから購入しました。

上の薬品全部で3万円弱かかりました。一番高かったのはやはり硝酸銀ですね。25gで4800円です。しかも消費量が多いので、ここが一番コストかかります。次に高いのは臭化カドミウムで、3600円かかりましたが、コロジオンを調合するために必要な量が少ないので、一回の購入で結構使えます。

他に調合用のピーかー、電子秤、加熱と乾燥用のアルコールランプ、硝酸銀の量を図る比重計、紙や手袋などの道具も必要です。精製水や普通のアルコール(50%前後のもの)も大量に用意したほうがいいです。これらのものはモノタロウとダイソーから購入しました。全部で1万円くらいです。

調合作業

いよいよ試薬の調合です。基本的な手順はこちらのマニュアル通りでやりました。詳しい説明はマニュアルをご参照ください。この記事ではメモ用に私の作業しているときの写真と注意事項書きに止めます。「このやり方よくないよ」とご指摘いただけると大変ありがたいです!

湿板マニュアル Basic Collodion Technique;Ambrotype & Tintype
湿板撮影のバイブル

時間:作業は午後2時からスタートして、夕方の8時くらいまで終わりました。6時間かかりましたが、ニスを作るのが一番大変でした。

注意:安全第一。作業するとき、エプロン、マスク、ゴーグルの着用が必須です!

調合の入る前に、ピーカーなどの道具はきれいにしましょう。高校時代の化学を思い出して、懐かしいです!

 コロジオンの調合

下の動画が一番詳しく紹介されていて、参考になりました。この方はプロなので、持っている道具も当然多いです。自宅でやるときはそうは行かなくても、そのプロセスを真似することで、ミスを少なくすることができます。

Mixing Salted Collodion, Part1

4ml蒸留水 + 3g臭化カドミウム + 4gヨウ化カリウム + 220mlコロジオン + 140mlエタノール + 140mlジエチルエーテル

コロジオンの調合
事前準備したときの様子
コロジオンの調合
電子秤でハロゲン化物の重さを計る
電子秤でハロゲン化物の重さを計る

この電子秤は食品用なので、精度は高くないです。より精度の高いものを購入したほうがいいです。

瓶からハロゲン化物を取り出すとき、スプーンの使い方に要注意です。粉が飛び散らないように少しずつ紙に載せていきましょう。

ハロゲン化物を溶かす
ハロゲン化物を4mlの蒸留水に溶かす(臭化物もあるのに、上の付箋にヨウ化と書いてしまった…)

220mlのコロジオンと140mlのジエチルエーテルを調合します。

220mlのコロジオンをピーかーに注ぐ
220mlのコロジオンをピーかーに注ぐ
140mlのジエチルエーテルをピーかーに注ぐ

ヨウ化溶液(正確にはハロゲン化溶液)に140mlのエタノールを加え、最終的にはこの2種類の溶液を調合します。

ハロゲン化溶液とコロジオンを「融合」する前

撹拌しながら注ぎます。下のような草色になっちゃいました。

湿板用コロジオンの初期形態

ここからは「コロジオンの熟成」という過程が必要です。保存瓶に移して、最初の3日は朝昼晩反転撹拌して、残りの2〜3週間はそのままおいて、沈殿させます。時々お湯に浸って温めると、熟成が速くなります。

2週間後…

コロジオン
使用するときにこの小さい瓶に移して使っている

透明な黄色になりました。本来は赤くなるはずですが、原因はわかりません…

硝酸銀の調合

ハロゲン化銀にならない限り、感光しないので、自然光の中でできます。

硝酸銀の結晶を蒸留水に溶かすだけの簡単なプロセスです。

現像液の調合

15g硫酸第一鉄 + 350ml蒸留水 + 15ml氷酢酸 + 20mlエタノール

現像液を調合する試薬

氷酢酸は強烈な匂いがします。風邪にいいかも…

混ぜてからロートで濾過します。

濾過して、緑色の透明液体になる

2週間経つと酸化して、黄色くなってしまいますが、大丈夫です。そのまま使えます。保存瓶はちゃんと閉めれるようなものにしたほうがいいです。

定着液の調合

500ml蒸留水 + 75gチオ硫酸ナトリウム

75gはかなり多いです。何回か分けて測った方がいいです。あとは混ぜるだけです。

ニスの調合

415mlエタノール + 60gガムサンダラック + 45mlラベンダーオイル

ニス調合用の材料、

このニスの調合が一番時間がかかりました。原因は二つあって、樹脂(ガムサンダラック)が塊になって溶かしにくいこと(30分)、そして異物が多く濾過するのにすごく大変(1.5時間)です。

樹脂は溶かしにくい

テキストにはボトルに入れて強く振ったほうがいいと書いてあります。撹拌だとやはり遅いですね。

濾過後透明な黄色になる

濾過はコーヒーフィルターが効率的です。何回かフィルターを交換して作業進めた方がいいです。

これで一通り薬品は揃えました。あとはガラスプレートを研磨するためのカルシウムですが、アルコールと混ぜて使います。1:1くらいの量で大丈夫です。

カメラとレンズ

武蔵野光機(ウィスター)のリトレック5×7ビューカメラとニッコル210mm F5.6をオークションから入手しました。2万円ずつで4万円かかりました。

なかなかかっこいい!

フィルムホルダーなので、湿板用に改造して使っています。改造方法の詳細はこちらの記事をご覧ください。

湿板撮影

基本プロセスはワークショップのときと同じです。暗室は赤い電球を買って、バスルームにつけてやっています。ここの詳しい話はまた今度の記事にさせてください。

一旦室内で露出のテストを行いました。5段に分けられていて、上から下まで32、16、8、4、2秒となっています。

参考動画はこちらです。

In-Camera Test Strip Exposure

GTX900でスキャンしました。やはり湿板のトーンはすばらしいです。

今回の撮影において、ワークショップの時と比べて、硝酸銀に浸かった時の白みが薄いです。冬なので、硝酸銀液体の温度を20度くらいにすることと、コロジオンの塗布後少し待ってから硝酸銀に入れたほうがいいとアドバイスをいただきました。今度試してみたいと思います。

初めての撮影にしてはまあまあできたとは思います。自分なりにはかなり嬉しい結果です。まだまだ雑なところもいっぱいあります。自分の腕前次第で結果が変わるのは湿板の面白さです。

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