高画素は意味あるか

最近ソニーのα7RIVの発売で135カメラの最高画素記録を6100万画素に更新しました。

確かにデジタルカメラが誕生してから、高画素化の道を辿ってきました。フルサイズカメラだけ見ると、

  • Toキャノン5Dは1280万
  • キャノン5D MarkIIは2110万
  • ソニーα7Rが3640万
  • ソニーα7RIIが4250万
  • ソニーα7RIVが6100万

と着々と画素数を増やしています。

一方、高画素を追い求める必要はないという声も途絶えることがありません。

高画素化のメリットとデメリット、上限はあるか、なぜ高画素化が今まで進んできたかをこの記事で解説します。

メリット:全体解像度アップ

高画素のメリットは明らかです。解像度が上がることで、被写体の情報を多く記録することができて、クロップしても使えます。写真を加工するときの自由度も高くなります。スマホなどの光学ズームしづらい場合もデジタルズームで何とかカバーできます。

α7RII+フォクトレンダー40/1.2
4250万画素のディテールは極めて豊富

フルサイズカメラの場合、本当はシステム全体の解像度は上がっていないという反論もあります。センサーの解像度は確かに上がったのですが、結局レンズの解像度が追いつかないのが理由です。

この反対意見を持つ人は、おそらくカメラシステムをファネルとしてとらえていて、レンズの解像度がボトルネックになっていると主張していると思います。

しかし、解像度だけでみたとき、必ずしもそうではありません。

デジタルカメラは入ってきた光情報を画素ごとにサンプリングすることで記録しています。そこで、全体の解像度はレンズの解像度とセンサーの解像度の“足し算”になります。

具体的には、全体の解像度(遮断周波数)を\(R\)として、レンズの解像度を\(R_L\)、センサーの解像度を\(R_D\)とした場合、その関係は下記のKatzの式を満たします。

$$\frac{1}{R}=\frac{1}{R_L}+\frac{1}{R_D}$$

なので、センサーの画素数を増やせば、とにかく全体の解像度は上がります。

デメリット:ファイルが大きい

高画素の場合、自然とファイルが大きくなります。結果として連続撮影可能枚数が低下します。

例えば同世代のソニーα7III(2420万画素)とα7RIII(4240万画素)の連続撮影可能枚数を比較したとき、前者は76枚、後者は163枚になります(JPEG Lサイズエクトトラファイン)。

ファイルが大きくなる分、大容量のメモリカードも必要になります。例えばRAWで撮影するときい一枚あたりのファイルの大きさはほぼ画素数に比例しています。α7IIIが40MBなら、α7RIIIは80MBと2倍くらいです。

後工程で処理するときも、端末の処理能力が高くないと、高画素の写真の加工がじづらいです。特に4Kモニターに接続して加工するとき、GPUの性能が低い場合はパソコンが固まってしまいます。

高感度性能は同レベル

高画素化は高感度性能を犠牲にするとよく言われます。

しかし、それはどういうふうに比較するかによります。

同じ感度で100%に拡大したときのノイズを比較すれば、確かに画素数の多いほうが負けます。

100%拡大のときの、2倍の画素数をもつα7RIIIはノイズレベルが高い

しかし、同じ画素数になるよう縮小すれば、ノイズレベルがほぼ同じです。その原因はSN比にあります。ここで詳しく話しませんが、同世代のセンサーなら、センサーのサイズがSN比を決めるほぼ唯一の要素です。つまり、画素数は関係ないです。

同じ画素数に縮小したとき、ノイズレベルが同等

高画素化と回折の影響

高画素化はこのまま進んでいくのでしょうか?物理的な上限はありますか?

「しばらくは続くのですが、上限はある」というのが答えです。

画素数が増えたことによって、回折の影響が大きくなります。

光は波の性質を持っているので、あまりにも小さいものに当たってしまう場合、回折現象が起きます。センサーの場合は、隣の画素に滲み出て、分別できなくなってしまいます

回折現象、画素が小さいと起こりやすい

画素がどこまで小さくなったら、回折が起きるかというと、レンズの絞りと光の波長のかけ算で決まります。

$$E=2.44 \lambda F$$

\(E\)は回折がぎりぎり悪さをしない画素のサイズです。\(\lambda\)が波長で、\(F\)が絞りです。

マツゲの部分に注目
左:F8の時解像力がピーク 右:F22の時、回折現象が起きて、解像力が落ちる
image from nikonsupport

画素数が増えると、ギリギリのの画素サイズ\(E\)を超えないためには絞りのF値を小さくするしかないです。例えば、α7RIVの画素サイズは3.73μmです。緑色の波長が550nmだから、絞りをF2.8以下にしないと回折による影響は免れません。

しかし、普通のズームレンズの絞りはF2.8が最小なのです。つまり、これ以上画素数を増やすと、いずれ回折の影響と相殺され、増やしても効果が薄いことになってしまいます。

まとめ

高画素化メリットとデメリットを話してきました。

結論としてはメリットはデメリットより大きいことが言えます。全体の解像度アップは確実なもので、回折や等倍でみたときの高感度低下があったとしても、縮小して比較すれば同等レベルになります。

デメリットとして確かにファイルが重くなりますが、チップの処理能力はムーアの法則に従って、非常に早いスピードで伸びます。大容量のメモリカードもカメラと比べたら安いものです。

本当のデメリットは同世代のカメラのなかで、高画素機はだいたい高いことでしょう。

技術以外の観点からでも、メーカーは高画素化を推進したいでしょう。

マーケティングにおいてカメラの画素数は一番わかりやすい指標です。ここ数年オーディオ業界で流行っているHi-Res(ハイレゾ)も全く同じことです。

では、楽しいカメラライフをお過ごしください!

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