友人がインスタに載せた一枚をきっかけに、六本木の森美術館で開催している塩田千春展に行ってみようと思いました。
真赤な線が巨大空間を繋いでいるような、分断しているようなインスタレーションにアーティストからのメッセージを感じました。
それを確かめるため、台風19号の後始末がされているなか、六本木ヒルズに足を踏みます。
カメラとレンズの準備
館内がくらいことを予想して、α7RIIとフォクトレンダー 40mm F1.2 VMを持っていきました。
ちょっと失敗したのが、館内は案外狭く、40mmでは、インスタレーションの迫力をうまく表現できません。
でもいいところもあって、観客と作品のインタラクションを近よりすぎない状態でフレーミングできます。モダーンアートは観客と一緒に作られるものだと聞きます。それを今回の撮影テーマの一つにしました。
ファイル形式はRAWにしました。凄まじい赤が使われているため、RAWで撮らないと色の滲みが発生する恐れがあるためです。
館内の注意事項として、三脚、フラッシュ禁止です。動画の撮影が禁止される場所もあるので、標識が貼られています。
塩田千春展の概要
アーティストの塩田千春は長くドイツに活動をしていた方です。2015年には第56回ヴェネチア・ビエンナーレに日本館代表として参加していました。今回の個展は彼女の25年の創作の振り返りでもあります。
合計113点の作品が展示されて、大型のインスタレーションだけではなく、写真、オペラや舞台芸術などもあります。
生と死をテーマに創作したこれらの作品は塩田さんの闘病生活の現れです。乳癌と闘ってきた彼女は生きる意味、魂の在り方をアートの中に込められています。
1時間に及ぶ観賞体験を写真とともに述べていきます。
作品と観客
巨大な空間に赤い糸が張り巡られているこの《不確かな旅》という作品は非常にインパクトがあります。船から伸ばしている壁のような糸の群、それが私たちを包み、まるで血管の間を行き来しているような感覚を与えます。
「不確かな旅」というタイトルから想像すると、ここは人間誰しも宿ったことのある母の子宮かもしれません。
あるいはこれは新生児が見ている世界です。人は網膜の上を流れている毛細血管に慣れて見えないだけすが、まだ世界の見慣れていない赤ん坊の目にある世界は「不確かな旅」です。
まとめ
台風が過ぎたこの日は雨でした。だいぶ秋が深まって、少し肌寒いなか15分間森美術館の入口の前に並んでいました。
1800円のチケットはけして安いとは言えません。しかし、共鳴を感じるだけで価値はあると思います。
女性ならではのものはありますが、命の鼓動は一緒だと思います。時間とともに去っていくものへの恋しさ、取り戻せない悔しさ、束縛されている魂のふるえと叫びが塩田千春さんのメッセージではないでしょうか。
最後に今回キュレーションなさった森美術館副館長・片岡真実の言葉を借りてしめます。
(塩田は)これまでは不在のなかに生命の営みの存在を感じ取ってきましたが、今回の作品ではその不在が作品化されたのではないでしょうか
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