映画『レオン』の撮影:カット分析

おっさんと小娘の物語

25年前、ツンデレの殺し屋のおっさんと可愛らしい小娘が、観客に悲しみあふれの美しい物語をもたらしました。 IMDbでは、約96万人が採点して、8.5の高得点になっています。

多くの新しい映画が上映されているなか、25年前にリリースされたこの映画が、今でも話題になることは名作の魅力です。物語自体が印象深いであるに加えて、忘れられないカットの存在も重要です。25年経った今でも、構図や明暗の表現から学びとるものが多いです。

ストーリー性のある構図

優秀な映画には一つの共通点があります。それは絵作りがストーリーに貢献していることです。構図は絵作りの要素の一つとして、ストーリー性を持つ必要があります。『レオン』においては、誘導線が実に巧みに使われて、構図のストーリー性を充足しています。

レオン

ヒロイン、マチルダの登場が典型的と言えるでしょう。つまらない顔に虚しさいっぱいの目をしている彼女は、廊下でタバコを吸っています。手前の手すりが黒い枠となって、彼女を囲っています。抑圧した暗い雰囲気が醸し出され、マチルダの現状を如実に語っています。

レオン

元気のないマチルダは顔を手すりに寄りかかっています。左右対称の構図に沿った手すりは刑務所を連想させ、そこにマチルダが閉じ込められている姿があります。

回廊を俯瞰させたこの一枚からも絶望感が伝わってきます。無限ループをしているような形で、底の見えない深淵です。

同じ回廊でも、捉え方が違うと違うストーリー性が伝わってきます。上のカットは麻薬の売人がレオンを探しているシーンです。グルグル回っている回廊がライフル線を連想させ、まるで銃口が麻薬の売人に向かっています。次の瞬間、彼はレオンに落とされてしまいます。

レオン

殺し屋としてのレオンはプロです。対称的な構図は殺し屋の威厳を表して、丸い枠とフェンスの後ろに隠れている顔はレオンの複雑な人間性と知られざる一面があることを強調しています。

レオンの掴めないところをクローズアップで表現しているカットです。サングラスはレオンの目を隠し、反射からは机と彼のボスを確認できます。感情に出ないけど、裏にはいろいろと動いている雰囲気が伝わってきます。

同じく枠を使っている構図ですが、このカットにおいては人物を分離する役割をしています。レオンが背景にあって、警察と戦っています。マチルダが前景に来て、斧を持っているものの、無力さが感じ取れます。レオンが必死にマチルダを守って、自分とは別世界、つまり危険から遠ざけるための「分離」だと捕らえられます。

悪人警察スタンスフィールドのこのカットは非常に印象深いです。銃を持って俊敏な動きをしている彼はボケて見えてしまいます。が、前景に大きく写っているため、観客はまず彼に注目するでしょう。次に、遠近感に誘導され、背景にある彼の部下に目が行きます。そう、自然と気づくのです。まっすぐ歩いている、頭すら写っていないスタンスフィールドとは対照的に、彼の部下は慌てて、恐怖に満ちているのです。麻薬の売人よりも、彼らの上司のほうが怖いかもしれません。

感情あふれの明暗表現

映画をグルメに例えるのなら、被写体は食材で、絞りやシャッタースピードは調理方法です。したがって、明暗は調味料で、絵作りの「味」の部分です。『レオン』の味は絶妙です。

レオンは神出鬼没な人です。登場してすぐ、その腕前を拝見できました。暗闇に隠れた冷徹な殺し屋としての人物像は上のような真っ暗なカットによって作り出されています。

しかし、メガネを外したレオンは人間的な側面もあります。上の映画館のシーンも真っ暗ですが、顔だけ明るく、目には優しい光が輝いています。このような対照的な明暗関係はレオンの複雑で矛盾した人間性を表現して、より現実的なキャラクターであることを語っています。

レオン

マチルダを救うまで、レオンの人生に明るいものは上の小鉢に植えた植物しかありませんでした。彼の仕事は常に闇に隠す必要があるが、この植物に光と暖かさへの希望を抱いたのに違いありません。

マチルダに出会ってから、レオンにも光が訪れました。暗いシーンばかりではなくなり、上のカットのような少しユーモアな要素の入った時すらあります。二人のかぶっている帽子の形、マチルダの帽子の赤と緑色のドア、フランス人ならではの遊び心かもしれません。

サイド光は明暗をはっきり分けることで、人物の葛藤を表現するのに用いられます。上のカットはまさにその通りで、体の半分が明るく、半分が暗いマチルダは復讐することに対する複雑な感情を描いています。

強い日差しに晒されているこのカットに、マチルダの表情は明るくありません。レオンの助けでやっと逃げ出したが、レオン自身がまだ囚われています。顔がシャドーに埋もれ、マチルダは自分だけが助かることを望んでいないことを表現しています。

映画の最後、コントラストの非常に高いこのシーンは絶対忘れられません。明るい外は希望であり、そこにさえたどり着ければ、マチルダと新い人生がはじめられると、レオンはきっとそう望んでいるはずです。それが銃声とともにかなうことはありませんでした。半ば閉じている扉がそれを象徴しているかのように、物語は悲劇として終わりました。

終わりに

リュック・ベッソン監督の『レオン』は映画史に残る名作として、何度でも我々を引きつけることになるでしょう。冷徹な殺し屋にして人間味あふれるおっさん、仇を打とうとする可愛い娘、正義の味方であるはずの悪人警察、対照的なキャラクター作りはこの作品の最大の魅力と言えるでしょう。

しかし、この魅力を画面を通して伝わらなければ意味がありません。キャラクターや物語と一緒に、教科書のような構図と明暗表現はきっと銘記されていくでしょう。

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